鹿島美術研究 年報第4号
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用され始めているのである。ユドゥリジエ氏の講演はこうした画像処理技術の美術研究への応用,なかでも図像研究への適用方法などについての,説明であった。なお,この講演内容は,近日中に,日仏美術学会の刊行物として出版される予定である。その後は,氏は日本各地で精力的な視察を続けられた。海外で,例えば,筑波の万国博覧会が高い関心を呼んだように,また,日米半導体問題がクローズ・アップされているように,日本の現在の情報処理技術は,大きな関心の的になっている。ユドゥリジエ氏もそのことは熟知しておられ,各地で,その先端技術のありようを視察されたわけである。まず,大阪の国立民族学博物館で,映像分析の現状を視察された。また,奈良では大和文華館を訪れ早川氏と,全国大会の発表をもとに更に専門的な意見の交換を行った。金沢では,情報処理で市をあげてのプロジェクトを持っていることもあり,金沢美術工芸大学で講演をされた。帰京後も精力的な視察を続け柏木研究所を再度訪れ,画像処理メーカーとして進んでいるパイオニアの工場を視察し,また,美術史の内容を持った,ワシントン・ナショナル・ギャラリーの所蔵品を画像ソフトに入力しそれを製品化に成功している建築情報センターを訪れた。そうした過程で,氏が発見し実は,日本における画像処理は,映像の入った「カラオケ」でもっとも進んでいるものの一つだという事実である。日本とフランスの国情の違いからくる興味深い観察である。ユドゥリジエ氏の講演のみならず,この日仏美術学会の大会はその後全国的に反縛を呼んだ。現在各地からその報告書の刊行が待たれている。学会ではその編集を目下鋭意行っているところで,ユドゥリジエ氏の講演内容は仏文のみならずその翻訳を掲載する予定である。また,この大会の様子は,ユドゥリジエ氏がフランスに帰国後氏が理事をつとめるポンピドー・センターを中心に反粋を呼んだ。これは秋にちょうど,ポンピドー・センターで「日本展」が開催され,その企画責任者か日仏美術学会常任委員の一人であられる高階秀爾氏を初め当学会の幹事である千葉成夫氏,また実行委員でありまた発表者のひとりであった三宅理ー氏であったこともあり,ユドゥリジエ氏,フランス大使館の視聴覚担当官ベルテ氏,そしてポンピドー・センターのマウー氏の間で,日本-207-

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