鹿島美術研究 年報第4号
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(イ)「研究者海外派遣」援助(1) 西欧初期中世壁画の調査研究(ラィヒェナウ島聖ゲオルク教会堂)派遣研究者:東京芸術大学美術学部助教授越調査研究の目的:ツェル所在ザンクト・ゲオルク聖堂(10世紀末)の実証研究に携わり,これまでに,現地調査の成果として10篇の論文を発表してきた。近い将来,この初期中世壁画に関する全資料を集成して,単行本(独文)にまとめる予定である。今回の海外調査の目的は,ラィヒェナウ壁画に近い時代の壁画遺例を実見し,それらの写真・文献等の資料を作製・収集することにより,ラィヒェナウ壁画の様式問題を再検討する基盤を確かなものとすること,及び,現在修復中のラィヒェナウ壁画の現状について調査することである。日程:7月1日ー9日ローマ(サン・セバスティアネロ等)及び南イタリア(サン・ヴィンチェンツォ,ベェネヴェント等)の初期中世壁画の調査7月10日ー16日ブレッシアのサン・サルヴァトーレ聖堂壁画(8/9世紀)の調査等7月17日ー19日ウィーン(大学美術史研究所)にて文献資料収集7月20日ー8月1日北イタリア(ガリアーノ,アオスタ,ノヴァーラ等)の初期中世壁画の調査,ミラノ及びトリーノの文化財保存局訪問8月2日ー5日ミュステールのザンクト・ヨーハン聖堂のカロリング朝壁画の調査8月6日ー21日ラィヒェナウ島オーバーツェルのザンクト・ゲオルフ聖堂及びゴルトバッハのジルヴェスター聖堂のオットー朝壁画の調査8月22日ー23日チューリヒのスイス国立美術館にてミュステール壁画の調査8月24日ー31日パリのミュゼ・デ・モニュマン・フランセの中世壁画模写及びフランス(ブリネー等)のロマネスク壁画の調査研究報研究者の海外における研究活動(2ヵ月間)は,主として移動調査の形を取って行われた。ここでは,先ずヨーロッパ各地の諸聖堂における中世壁画の調査について,次に文献等資料の収集活動について略述したい。1970年代の初めより,ドイツ・オットー朝壁画の代表作,ラィヒェナウ島オーバー-217-

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