鹿島美術研究 年報第4号
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図2ウシェプティ(無銘)。第21王朝(?)時代。図3ネシィタネブタウイのウシェブティ。第21王朝時代。デール・エル・バハリ出(以上5点は,いずれも岡山県川上郡成羽町立,成羽文化センターのウシェブティ・コレクションより) 第19王朝の作品であった。したがって美術館学上,今後のコレクションの方向性とし図1アメン神の第1図4アメンイルディスの息子,プサメチクのウシェブティ。第26王朝時代。図5ウシェブティ。第30王朝〜プトレマイオス王朝時代。無銘のものは様式からの判別に頼る以外に方法がなく不確実であり,第2には,たとえルーヴルと他のコレクションに共通のウシェブティが見いだされても共に購入品であって出土地が不明であり,第3に,更に発掘品であっても,数十年以前に書かれた報告書の記述が不明確で出土状況が判らないなどの点が挙げられる。このような不明なウシェブティに関しては1点づつ更に丹念に調査を続け,様式別分類に加えて,名,肩書きと親子関係の情報などから,人物の識別を行う作業を積み重ね,年代を割り出す以外に解決方法がないという結論に達し,今後この作業を続行していきたい。世界中に散逸している何万点もの葬祭用小像及びその断片の分類の研究は,現在の比較照応の個人的作業では進展が遅く,将来は世界各地のコレクションを結ぶコンピュータ使用が有益かつ至便であろう。以上の年代別分類調査の結果,わが国の美術館所蔵のウシェブティの大半は,末期王国時代とプトレマイオス王朝時代の葬祭用小像で,最古のものは新王国時代後半のては,困難ではあろうが,中王国時代と18王朝時代のウシェブティを更に追加することによって,その全貌を把握することが望ましいとも言えよう。図説明:ル・エル・バハリ出土。土。ピネジェム2世のウシェブティ。第21王朝時代。-227-

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