5.文化財の置かれている環境の評価2.対象となる文化財の基礎的知識3.文化財材質の科学的調査法4.文化財の変質劣化,消滅の現状,原因など6.保存修復の実際7.虫害,かびの害など生物的問題もあるが,同時に,社会の需給関係の不備に起因するものでもあった。次に現行のカリキュラム内容について述べる。大学院5年間の課程より成るが,その前期課程修士の課程では以下のような内容が含まれるべきであり,また現実に当教室のカリキュラム内容ともなっている。1.文化財保存の意義についての考察美術史・考古学・文化史等の素養を身につけること。社会に於ける保存機運,文化財破壊の実態,社会人教育としての文化財保存修復への理解,等々。上と同じく,美術史などの素養,制作技法などに関する知識化学分析,薬品の知識,機器による分析法(電気分析,分光学的方法,放射能利用,X線利用など)写真撮影(赤外線,紫外線,X線透過写真)顕微鏡観察色彩学,化学結合,無機化合物個別の性質,染料等の有機物の性質,光分解反応その他。温度,湿度,照明の光度などの測定,大気汚染の測定,エアコンディショニングの方法。脱塩処理,真空凍結乾燥,PEG含浸,樹脂処理,等々害虫等に対する基礎知識,防虫剤等必要とする知識は多岐にわたり,その体系化は極めて困難である。これらの学習に対する大きな問題は,これらを習得すべき学生たちの入学以前に経てきた被教育歴の差異ばらつきである。前述のように当方は大学院のみのコースであるため,新入の学生は他の大学あるいは専攻を他とする教室よりの出身者となる。また,文化財保護が主として学芸員によってなされて来たこれまでの事情から,志望者のうちかなりの部分はいわゆる文科系なしいは芸術系学部出身者で占められるのが常であるし,これらを全く排除することは,文化財保護に対する社会的要請からも許されることではない。-241-
元のページ ../index.html#259