1.ポンペイ第二様式壁画における教養主義東京大学文学部助教授青柳正規前一世紀初頭に形成されたポンペイ壁画第—様式は,極めて濃厚なヘレニズム的性格をその特徴としている。このためその起源をヘレニズム絵画に求める傾向もあったが,その遺例が前か知見されないため,ローマ人によって創り上げられた絵画様式であると現在では見倣されている。つまり,ヘレニズム絵画の展開においてその最終段階を示しているのではなく,ヘレニズム文化に対するローマ人の憧憬がこの様式を受身で成立させたとする考えである。換言するなら,ヘレニズム美術の影脚を受身で受容したのではなく,ローマ人が能動的にヘレニズム美術をとらえたその結果であった。過去の美術を展望するだけでなく,展望による理解の中から新たな構築を行うとき,一定のクリテリアを必要とする。ギリシア人美術家が介在したにせよ,少くともローマ人の意図によって形成された第二様式には,単なる折衷主義では片づけることのできないクリテリアがある。これらのクリテリアのうち,いくつかの第二様式壁画に反映している教養主義というクリテリウムを,当時の文化的背景とともに考察しようとするのがこの報告の目的である。—再発見く十二帝王図>を中心に一~山梨県立美術館学芸員井出洋一郎初期洋風画の図像の源泉の多くはフランドル製の舶載版画に負っている。従ってその原図版画の探索,確認は初期洋風画研究の基本的作業であろう。本発表は戦後行方100年以降のローマ人が支配する土地においてし2.近世西洋版画と初期洋風画の関係について第3回研究報告会報告概要-14 -
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