4.ヴァティカン・システィナ礼拝堂天井壁画の調査研究1985年,86年にわたって,システィナ礼拝堂の修復成果を調査し,旧来汚染のためにいたるまでの—であることはすでに明らかであるが,論点は以下の二点である。していることが明らかとなった。しかしこうした画家達の多くはその後美術界を先導する歴史の表面から消えていき,代わって鑑画会の発展結実ともいえる東京美術学校出身者が時代をリードしていくようになる。ところが奇妙なことに,基本的にジャポニスムの趣向に沿って集められたと言ってよいアメリカの日本美術コレクションの中で,鑑画会や日本美術院系の作品はいずれもメジャーなものではな〈,平均的なジャポニスムの趣向に合致するものではなかったことがわかる。つまりジャポニスムを背負ったフェノロサの蒔いた種から育った日本画が,逆にジャポニスムから離れた形で自己発達していく状況がここに見えてくるのである。一<ルネッタ>の図像学的解釈一東京芸術大学音楽部教授若桑みどりにその芸術的価値を評価されることがなく,したがって,その図像学的研究も十分には行われていなかった<ルネッタ(半月形壁画)>について,つぶさに観察した結果,今回或る仮説をたてることができた。今回の発表では,修復によって現われた極めて鮮明な画像を紹介するとともに,フレデリック・ハート,エドガー・ヴィント,シャルル・トルナイ,エステル・ドットソンなどによって行われてきた旧書の<ルネッタ>の人物像に関する諸説を再検討し,次に私の仮説を提出して,今後の研究への指針とすべく諸兄姉のご助言,批判を乞いたいと思う。<ルネッタ>に描かれているのは,キリストの先祖た(1) このくキリストの先祖たち>が,天井に描かれた創世紀及び預言者・巫女といかなる構成上の関係をもつか。ノアの子孫からイエス-16 -
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