(2) <キリストの先祖たち>が,旧約の世代の叙述であるということは明らかだが,それらの個々の人物にはどのような象徴性が与えられているか。(1)については,システィナの天井画全体のコンセプションがいかなるものであるかについての,いわば基礎的な解釈が掘り起こされる。また(2)については,<ルネッタ>に描かれた人物が,ミケランジェロによって,どのような意味を与えられているかについて,ユリウスニ世統治下のカソリック神学における問題,あるいは,1508年当時のミケランジェロの思想的傾向などについての考察が必要である。この結果,歴史家たちの最大の争点は,この図像について,思想的な暗示を与えたのは何人であるか,あるいは,いかなる書物であるかという<テクスト探し>にある。結論として,私は,サヴォナローラの説教集<ルツとミケアについての説教>及びく正しき人々の系図についての説教>を,ミケランジェロの着想の重要なテクストとして提出したい。また,この基礎にもとづいて個々の図像についての具体的な解釈も,時間の許すかぎり提案し,ご批判を願いたいと思っている。この仮説はまったく新しいものであり,まだ多くの未熟な点を含んでいるからである。-17 -
元のページ ../index.html#31