8.関東地方における定朝様彫刻の研究9.ホイスラーの基礎資料に関する調査研究研究者:茨城県立歴史館学芸第二室長後藤道雄研究目的:大仏師定朝によって完成された和様彫刻,すなわち定朝様式と,造像技法寄木造りと割矧造りは,定朝以後永く造仏界に大きな影靱を与え,全国に波及し,多くの作例をみることができる。関東地方における定朝様式の流入は12世紀頃にはじまり,その影縛は精粗様々であるが各地に作品を遺し,しかも運慶様に代表される新様式と併存しながら鎌倉時代に及んでいる。定朝様式が次第に類型化の傾向をたどった平安時代末の造仏界については,日本彫刻史上最も動きの少ない時期ともいえるが,関東地方の造仏遺例は,この時代に入ると大変多くなる。本研究は,一つの様風作例として遺例の多い関東の定朝様彫刻の資料を体系的に収集し,作風・技法上から検討を行い,その史的展開と地域的特質を考察するとともに,資料集成の公刊によって美術史研究に資することを目的とする。研究者:東海女子大学文学部助教授中山研究目的:ホイスラーに関しては幸い根本資料のかなりの部分が,グラスゴーとワシントンに集中的に保存されている。更に,ホイスラー作品そのものも,この2箇所に主要作品の多くが収蔵されていて,両地はさながらホイスラー研究の拠点といってもよい。ワシントンには米国議会図書館とフリア・ギャラリーに,イギリスのグラスゴーにはグラスゴー大学にホイスラー関係の資料が保存されている。ところが,米国議会図書館のものを除いて,ほとんどは書籍などのかたちでは公にされていない。したがって,綿密な研究をしようとするとこうした現地での調査が是非とも必要になってくる。例えぱ,ホイスラー作の屏風の裏の日本画の落款印影について,写真では判断し難く,正確な点を明らかにするには実物に接するしかないのである。ホイスラー自身の油彩作品に関しては,近年カタログ・レゾネが刊行されたお陰で,細かなデータはかなり整理された。それだからこそ,今はこれを踏まえた具体的資料の検討がやりやすくなったし,またなされなければならないであろう。そうした資料-28 -功
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