22.日本古代仏教彫刻史における中国美術の受容23.世紀転換期のドイツにおける総合芸術誌の研究研究者:東北大学文学部助手長岡龍作研究目的:この研究は東アジア仏教彫刻史の大きな流れの中における日本彫刻という観点から日本彫刻史を捉え直してゆこうとするものである。ここでは,特に時代を天平末から平安初期に絞って考えてゆくが,それは,この時代が,技法上,様式上の大きな転換期であると同時に,そこに中国からの強い影開がもたらされているからに他ならない。しかし従来,この時代における中国美術と日本彫刻の関連は大きく取り沙汰されているにもかかわらず,具体的作例との比較において論じられることは少なかった。それは同時期の中国の遺品の少なさにもよるが,むしろ,一般的に中晩唐期が様式的衰退期とされることから,その影特を部分的にしか認めず,両者の全体的な様式比較が積極的に行われていないことによるであろう。ところが,この研究で重要視したい四川という地域は保守的な土地柄であり,8世紀末から9世紀にかけても中央様式たる長安様式を温存していたであろうことが推測され,殊に広元南寵に存在する地蔵菩薩像が日本の平安初期像に極めて近い様式を示す点で注目されるように,同地方に対する実査は一層の新知見をもたらすであろうことが期待される。更に,中国彫刻の遺品を多く所蔵しているアメリカの各美術館を回り,多くの実査を踏むこともこの研究には不可欠である。特にボストン美術館地蔵菩薩坐像というような作例は,日本彫刻と中国彫刻との様式上の関連を予想されるであろう。以上のように,中国国内及び在アメリカの作例の実査によって具体的な比較を日本彫刻と中国彫刻との間に試み,従来,漠然とのみ扱われていた部分をより明白にし,平安初期日本彫刻を新たに捉え直すのが研究の課題であり,構想理由である。ーユーゲントシュティールとの関連をめぐって一研究者:大阪芸術大学助教授研究目的:これまで一般にユーゲントシュティールは,その耽美主義的な側面のみが強調され,世紀の転換期に人々を魅了したつかの間の事象として限定的に意味づけられる傾向に薮享-38
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