25.増山雪斎とその周辺について26.日本中近世における鳥獣を含む肖像画に関する調査と実証的研究① 鳥獣の肖像ともいうべき記念的写生像が何故単独で現存するか。その制作意図,② 普通の肖像画に対し,数は少ないが,鳥獣を側におく肖像画が存在し,奇異の印に隣接し,京都に近いという環境からいって,当然のことともいえるが,こうしたハイライトをつなぐ時期の,そしてその後の美術史的実態を仏像を中心に考察していきたいと意図している。研究者:三重県立美術館学芸員山口泰弘研究目的:増山雪斎の文人・本草家・画家としての多面的な活動は,いずれも不即不離の関係で結び付き作品の技法や表現の重要な要素となっていて,それ自体でこの時代の画人の多様性を含んだ体質を象徴するものとして興味深いが,雪斎を,同時代の画壇,あるいはそれを含む文化的環境のなかに置いて捉えると,江戸時代後期における南籟派の広がり,近世写生帖の実証主義精神との関わり,あるいは文人画壇の状況といった美術史問題についても広く考察を加えることができるように思う。そこで今回の調査研究では,増山雪斎の作品・著作・経歴など,総合的に調査することと併せて,同時代の関係画人や本草学関係資料についても調査の枠を広げたい。研究者:東京大学史料編纂所助教授加藤秀研究目的:鳥獣の写生像及びそれを含む肖像画研究の目的存在理由を解明する。それは人間の身近にあり,馴れ親しんだ鳥獣に対する感情の表出,珍奇なるものヘの博物学的記録的関心,そのものを長く記念するための表現等々の理由を直接には賛,画かせた人物,歴史的背景を検討すれば解答を得られよう。また公家の駿牛図より,武家の駿馬図にいたるその理想像を求める美意識が,記念的写生図へ,博物学的思考より,写真図へと移行することが解明されよう。象を与えるものがある。その製作意図及び真の像主を確定する。これは,鳥獣を側におくことによって像主の性格,生活態度,職業等を文によらず,-40 -
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