鹿島美術研究 年報第4号
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27.写真保存技術の調査研究し‘゜説明,活写しているものと考える。それを真に理解するためには,像主の身体的特徴はもとより,画かれた鳥獣は勿論,服装,武具,馬具等の品々の細部の分析,傍証的記録の探訪より,徹底的に解明されねばならない。そうすれば現在称されている像主の当否,伝承捏造による偽称は解明,打破され,積極的には真実の像主の確定となり,消極的には伝承の人物の否定的見解も納得せしめられよう。なお,断定は為し得ないが成慶院の武田信玄(畠山氏),守屋氏の伝足利尊氏(高氏父・子か),地蔵院の伝足利義尚(今川氏),東京国立博物館の伝名和長年(斉藤氏)はいずれも,それに該当せず()内の人物であろうと考えている。研究者:京都国立近代美術館研究員河本信治研究目的:この研究は単に写真保存の技術的側面を目的とするものではない。周知のように,ダダ,シュールレアリスム,バウハウス運動等に見られるように,写真は今世紀の美術運動に計り知れない関わりを持ってきた。しかし,美術としての写真,印画された写真の美術作品としての価値に対する一般の認識は極めて低いと言わなければならな美術としての写真の重要性と,今世紀美術に果した写真の役割についての認識をめるためには,優れた写真作品を良好な状態で管理,収蔵し,展示活動を行って行くことがまず基本である。写真の保存,管理のためには美術史,写真史の研究と並行して写真技術史の研究と写真保存,管理技術の修得が不可欠なことは言うまでもない。この研究は,最も進んでいると言われるアメリカの主要美術館の現場において,実践的な写真保存技術を修得し,同時に,美術館活動における写真の役割と可能性を研究することが目的である。この研究により得られる成果は,高度な写真保存技術の修得のみに止まらず,20世紀の特徴的メディアである写真を軸に,今世紀美術史を再構成するという新しい視点を生む契機となり得るものと確信している。-41 -

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