32.欧米所在の明末・清初の版画研究査研究することは,いわば戦前と戦後の接点を明らかにすることであり,複雑な展開をつづけてきた今日までの美術に対して,彼らの担い続けた課題に即しつつ,一本の道筋をつけることかと思われる。そこからは,彼らの作品と軌跡を通じて,昭和という時代のひとつの精神史を明示することができると思われる。31.クロード・ロランの風景画の研究ーピクチャレスク・ランドスケープの源流を求めて一研究者:京都工芸繊維大学工芸学部助手藤田治彦研究目的:「ピクチャレスク」の代名詞といっても過言ではないクロード・ロランによる風景画は,殊に,同時代人ニコラ・プーサンの英雄的風景画と比較した場合,永く看過されて来たと言わざるを得ない。特に日本国内では,ほとんど注目されることは無く,この調査研究による,クロード・ロランの日本への紹介は意義あることだと思われる。更にこの研究は,後世の風景画だけでなく,造園,建築そして文芸にまで大きな影を及ぼした画家,視覚的理念形成者としてのクロード・ロランによる風景画の調査研究であり,「ランドスケープ・デザイン」という構想にひとつの出発点を有する絵画研究と言うべき特異な性格を持っている。従って,絵画研究としての本調査研究は,あくまでも美術史研究に貢献することを直接の目的としているも何らかの貢献をすることになると確信している。翻って記すならば,人間の環境の視覚的価値の研究としてのこの調査研究は,絵画芸術の基盤として,従来の枠組を超えた美術史を想定している。研究者:実践女子大学文学部助教授小林宏光研究目的:明末清初期は,唐宋以来発達してきた中国版画の集大成の時期と見ることができるばかりでなく,質,量ともに版画生産の最盛期であると考えられる。しかし,明清版画の日本における体系的研究はこれまでに充分行われているとは考えられず,また,内外で中国版画の発達と肉筆画との相互関係という側面からの研究は今日までほとん将来,「ランドスケープ」自体と,そのデザインの研究に44 -
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