鹿島美術研究 年報第4号
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34.室町幕府御用絵師としての周文の研究35.呉偉と南京画壇の研究造像活動の把握と,その遺作の作品研究を両軸とし,在銘作例による編年研究を併せて,より正確な院政期彫刻史研究を試みる。これによって,この期の三派仏師の作風の変化がより明瞭になり,院政期彫刻史研究はより実証的なものとなるであろう。研究者:東海大学教養部専任講師斉藤昌利研究目的:室町時代の絵画史研究は作品を直接の対象とすることが多く,作家論としても各々の作家の作品論がその中心をなしてきた。最近では画家の社会的背景をも含めた研究が行われるようになり,文化史的な捉え方がなされるようになってきている。しかし,室町時代の御用絵師に関する研究は,宮廷絵所も含めて,個々の画家の活動の一部として述べられることが多く,当時の画家の組織がどのようなものであったかというような,御用絵師を直接の対象とする研究はほとんど見られない。この研究では,周文に限らず,宮廷絵所など大和絵系の画家なども含めた画家の組織,社会的地位や仕事の内容などに関して,文献資料を通して考察する。また,作品研究においては当時多く使われた画様という点に留意しながら,各々の画家の個性という面でなく共通点を取り上げることにより,当時の絵画における基本的要素はどのようなものであったのかという点を考察する。研究者:東京国立博物館東洋課主任研究官研究目的:明代絵画史は,董其昌の南北二宗論以来,浙派と呉派という対立する二大画派の展開として理解されているが,現存作品をみる限り董其昌の主張するような浙派と呉派の様式上の対立は文徽明以降,すなわち16世紀以降のことと考えられる。浙派は戴進以降,宮廷と在野において大きな展開を示すが,その内容は複雑であり,特に呉偉以降,浙派は変容したといわれる。従来,その変容は浙派内部における現象としてのみ理解されているようであるが,近年,中国において新たに紹介された呉偉をはじめとする浙派作品の中には,呉派とも非常に共通する部分のあることを示しており,この-46 _ 湊信幸

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