ベルガー4.オデイロン・ルドンの風景画のクロノロジー「メドックの家」をめぐってPhantasie und Far be"が,ルドンの色彩作品の唯一のレゾネと呼びうる頁を含んで(A sor-M~me, 1922)は,ルドン神話の元凶であるが,この中の個々の記述の編年研究者:岐阜県美術館学芸員山本敦子研究目的:「メドックの家」の問題は,この一作品に限られることではなく,ルドンの色彩作品のクロノロジーは画家が制作年を記す習慣を持たなかったことも手伝って,現在迄のところ甚だ曖昧なままに終わっている。1964年のKlausBergerの“OdilonRedon ; いるが,この書の信憑性は近年とみに疑問視されてきており,より完備したレゾネの完成が待望される状況にある。また,この色彩作品に限らず,ルドン神話(これは1920年までに,画家自身とA.メレリオによって大方形成された)は,あらゆる点で抜本的な再検討と吟味を要するのであり,未公開の文献資料の発掘と共に,公開,非公開を問わず,彼の遺作一点一点への注意深い調査が必要なのである。生前の画家の友人でありコレクターであったオランダのA.ボンゲル,スイスのハーンローザー等の遺族,また,アリ・ルドン・コレクションの事実上の管理人であるR.バクー,これらの人々の手元に未公開資料が保存されていると目される。編纂者名の明記を欠く画家の手記自体全幅の信頼を置くにはあまりにも多く,曖昧さを含んでいる。ルドンの200数十点に及ぶ版画に関しても,1913年のA.メレリ編のレゾネが一応決定版とされるが,これをもって完結とする訳には勿論ない。1975年にハリソンによる銅版画33点に関するより詳細なカタログ・レゾネ(刊行は1986年)が発表されたように,ルドン研究はようやく伝説の時代を脱しつつあるといってよい。色彩作品については,ベルガーの段階で油彩,水彩,ドローイング併せて計785点が数えられているが,ここに含まれないもので真筆とされる作品は未だ多く,その上贋作らしきものも出始めている状況を鑑み何らかの形での検討,研究,整理が早急に必要とされているのである。-51 -
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