う2つの造形的要素は,お互い不可分に絡み合いながら、時としてシュアレスのテキ;ぐ図1.Passion表紙下絵化によるもの・(図1• 2)及び主題の再解釈によると思われるものを,それぞれ少数ながら認める事ができた。しかし作品を仔細に観察した結果,造形的変更の多〈は,どうも白黒のグワッシュによる下絵から.彩色された油彩画へと移行する際の,色彩の導入に関係しているように思われた。何故なら,この色彩の導入はルオーの場合,同時にmatiereの注目すべき変化を伴っていたからだ。従って,色彩とmatiereといストを越えて,油彩画『受難Iの創造に際し,本質的契機たり得たと考えられる。一方ルオーの油彩画のmatiereは,この連作『受難jの描かれた1930年代の半ばを境に変化の兆しを見せ始める。それはこれまでの絵具の盛り上げの少ない平面的なmatiereから,絵具の厚い盛り上げにより凹凸のできた立体的なmatiereへの変化である。この後期油彩画を,それ以前の油彩画から区別する重要な指標となっているのは衆知の通りである。確かにクールティヨンも,「ルオーがその油彩画を絵具の高い盛り上げhaute西teによって豊かに養い始めたのは,『受難』を描いた時期のあらゆる作品においてであり.この厚塗りhautepateはさらに肥大してゆき,ついに晩年の作品では火山の眩惑的な溶岩の流れを思わせるほどにまでなった(2)。」と指摘している。しかし何故この時期に,ほとんど突如として,ルオーのmat応reが肥大を始めたのかは,これまで具のmatiereの彫塑的な3次元化は,30年代半ばより晩年に到るまで続けられ,ルオー-68 -図2Passion表紙油彩
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