鹿島美術研究 年報第5号
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(15) 牧浴に関する総合的研究フォルトゥナートおよびマルコ・ティエーネ>(図9)の中の読書する聖マルコのポーズに認めることができる。サンタ・コローナ聖堂のミケリーノの壁画についてはG.えて,上記の六使徒像について次のような結論を導き出すことができる。この六使徒は,1404-1415年頃にジョヴァンニ・ティエーネから,ヴィンチェンツァのサンタ・コローナ聖堂ティエーネ家礼拝堂全体を装飾するように委嘱された(現存する壁画はその一部にすぎない)ミケリーノ・ダ・ベゾッツォの傍らで,同装飾のために助手を務めた逸名画家によって,同じくティエーネ家の一員の依頼に基づき15世紀第二四半世紀に制作されたと推察しうる。だが,同画家がミケリーノに従ってロンバルディアからやって来たのか,それともヴェネト地方滞在中のミケリーノの許で修業したのかは,推定し難い。いずれにせよ,この新知見は,ヴェネト地方におけるミケリーノ芸術の反響の大きさを示す有効な証左となるであろう。この六使徒像について詳しくは,伊文小論文“Unseguace di Michelino da Besozzo in S. Vincenzo di 以上は昭和62年度の調査から導き出された成果の一部にすぎない。出版(もしくは出版予定の)論文:“GiovanniBadile collaboratore del Pisanello? ディーレの作品カタログのために」,『多摩美術大学研究紀要』第4輯所収;“Unseguace di Michellino da Besozzo in S. Vincenzo di Thiene", ~(予定)。_花丼雑画巻と室町水墨画_研究者:東京大学文学部助手研究報告:牧癸谷は単に禅宗絵画という枠内に留まることなく,非常に幅広いレパートリーをこなした画家であると言う認識は,室町時代にすでに形成されていたと考えられる。例えば君台観左右帳記(東北大体)が彼のレパートリーを「龍虎・猿雀・芦雁・山水・樹石・人物・花果・折枝」と記すのは,室町水墨画にとって極めて重要な他の南宋の山下裕―ALGERIの優れた論考("PerI'attivita di Michelino da Besozzo in Veneto", in Arte Cristiana, n. s. vol. LXXV-n. 718, 1987, pp. 17-32)があるが,その論考を踏まThiene" (Paragone編集委員のひとりM.Gregoriに提出済み)に譲る。Contributo alla datazione del ciclo cavalleresco del Pisanello a Mantova. ", Quaderni di Palazzo Te, N. 7 (luglio-dicembre 1987)所収:「ジョヴァンニ・バ-118-

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