鹿島美術研究 年報第5号
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は阿弥陀の脇侍として地蔵とともに虚空蔵が安置された広隆寺講堂の例がある。鎌倉以降の仏画では北斗とともに虚空蔵が描かれる例があり,北斗は冥界と深い関わりがあることを考え併せると,地獄と虚空蔵との関係はより広い視野で今後眺めてゆく必要があろう。さらに十三仏の中の虚空蔵も,こうした性格と無縁とは思われず,十三仏の発生や,三十日秘仏との関わりなど,解明すべき問題が残されている。(19) 仙居壮年期における基準作の確定研究者:福岡市美術館学芸員中山喜一朗研究報告:この調査研究は,昭和62年6月から昭和63年3月にかけて,全国の仙厘関係寺院,作品所蔵美術館,個人などを対象に調査を実施し,未紹介の作品や関係資料の発掘とともに,仙厘に関する基礎的データの集積と充実を計り,その結果として,仙厘壮年特に壮年期に焦点を絞ったのは,従来,仙厘の禅画といえば70歳代から80歳代の晩年の瓢逸な戯画的色彩の濃い作品が常にクローズアップされ,壮年期の作品はこれに比べて紹介された数も少ないこと。またこの頃の作品は,後の仙厘の独壇場ともいえる作風の成立を考察する上で重要な時期であることを考慮したために他ならない。つまり壮年期における基準作の確定は,仙厘の全画業を画風展開の視点から考察しようとする美術史的見地から,必要欠くべからざる基本的課題といえよう。調査対象となったのは,寺院6件,美術館3件,個人18件の計27件で,調査作品はこの報告は,昭和60年以来の調査の成果に今回の調査結果および集積データを加え,仙厘の壮年期における基準作の選定並びに画風展開について若干の考察と知見を述べたものである。ただ仙厘の全生涯に及ぶ調査は,今後も継続して行われなければならず,また鹿島美術財団からは,この助成とは別に,本年12月刊行予定の『福岡市美術館叢書第2号仙厘ー一その生涯と芸術』に対して,「美術に関する出版の援助」も頂いている。従って本報告はあくまでも中間報告とし,詳細にわたっては『仙厘ーーその生涯と芸術』において論述したいと思う。期(30■50歳代)における基準作の確定を目的としたものである。230点を数えた。-130 -

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