鹿島美術研究 年報第5号
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しんば神馬に属するものだろう。赤の三懸は荘重な美を演出している。ろうか,残念である。他に像主を特定するための武装等の特徴は目下見出せないでいる。悲観的ではあるが,戦記史料より,再度悉皆調査をと考えている。烏黒の毛付は1.細川澄元像この像についての新知見は,鐙の透しの桜花紋である。細川家の家紋の例としては古いものである。馬の主毛は,白栗毛のようで,蹴・尾が白く異相で,神馬の相の系統にあると考える。1.足利義尚像私の疑問とするところは,澄元像の鐙の桜花紋の透しの位置に“赤鳥紋=馬櫛紋”があることで,これは今川氏の“しるし”として有名故,あるいは今川氏の誰かと推測するものであるが,未だ調査が行き届かず,模索の域を出ない。「出陣影の研究」を復習・検討したい。1.伝名和長利像この像主は着衣の“帆掛舟文様”より,名和長利とされたと考えるが,信春=等伯説に従えば,時代・地縁より,当然否定さるべきものである。馬の口取を配し,馬を繋ぎ,像主をひきたてる異常な比率の画面構成に独得のものがある。小性の捧げた杯に“梅鉢紋”が描かれ,目貫は明瞭ではないが,当時の様式通り,太刀は三箇,脇差は二箇の持合梅鉢紋のように見える。梅鉢紋は近畿北陸の斎藤氏の代表的な家紋であるので,あるいは大坪流馬術の中興の祖,斎藤安芸守好玄(能登熊木城主というが,未確認)かとも考えられるが,確証に乏ぼしい。等伯説に従えば,地理的には無理がない。供えられた枇杷を如何に見るか。追菩供養のための像とすれば,斎藤氏の誰かと見るにゆとりが出る。1.飯尾宗祇騎馬像これは漂泊の連歌師の旅を表現したもので,愛馬とは言い得ぬかもしれぬ。1.馬乗騎馬像二点多分騎馬に熱心な五藤家の者が,幕末江戸にて,名ある馬乗が調教中の場面を写生したもので,“随身庭騎図”の意図に同様の,一種の記録写真と見られる。馬は運動中である。1.佐久間将監像猫を抱く珍しい例であるが,江月の賛に,“平日愛猫児”とある。性向を示し,泰平永青文庫蔵地蔵院蔵東京国立博物館蔵ボストン美術館蔵安芸五藤家蔵江月・羅山賛-161-

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