鹿島美術研究 年報第5号
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図書館での写真資料,作品の収集,管理の活動は,日本でも近年ようやく具体的な活動を示し始めてきた。本年秋には写真をその収集の中心にすえる川崎市立美術館,1989年には横浜市立美術館の開館が予定されている。また東京都も大規模な写真収集研究施設を設立する構想を進めている。京都国立近代美術館ではこうした動きに先駆け,1986年に約1,100点の欧米の近代写真作品を収蔵し,美術館として写真作品の展示,研究を開始している。こうした写真に対する広範な関心の高まりは,収集された写真の保存・管理上の数々の疑問や問題点を必然的に生み出してくる。しかしこの分野も日本では未開拓の分野であり,今後の研究と経験の蓄積を待たなければならない。今回の調査は,写真の保存・管理において,世界で最も進んでいると言われるアメリカの主要な施設を訪ね,その現場で実際の運営と写真管理の実状を調査するのが目的であった。また必然的に膨大な量に膨れ上がる所蔵写真作品,資料の整理,管理技術,その組織化の上での哲学と方法論について調査の多くを割いた。調査記録調査期間:1988年2月8日ー1988年3月16日今回の調査に当たって,アメリカでも最も設備やスタッフが充実し,活発な活動をしている下記の施設を訪問し,付記の専門スタッフから指導とアドバイスを得ることができた。1988年2月8日ー2月13日ニューヨーク近代美術館写真部:スーザム・キスマリック女史(アッシスタント・キューレーター)*美術館写真部としては最と歴史の古いニューヨーク近代美術館所蔵の写真作品の日常管理,整理の方法論,展覧会以外の一般の閲覧希望者への対応システム,作品収集方針について調査。1988年2月15日ー2月20日アート・インスティテュート・シカゴ,写真部.’デビット・トラビス氏(チーフ・キューレーター)-163-

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