と,その基礎となる写真保存上のデータのコピーも入手する事ができた。1988年3月7日ー12日インターナショナル・センター・オブ・フォトグラフィー:コーネル・キャパ(ディレクター)*当センターは写真記録の収集保存とともに,現在活躍する写真家たちの活動を援助する組織でもある。したがってここでの調査は,写真家の関連情報資料の整理,リファレンス・システムについて,そして最新のカラー写真やインスタント・カメラによる写真作品の保存についての技術的な問題を重視した。カラー写真の保存についてはこの技法が開発されてから数十年しか経過しておらず,まだ試行錯誤の段階であった。冷凍保存などの極端な保存実験についての興味ある報告など手に入れることができた。写真保存の重要性と美術館活動いまや写真はどのメディアよりも強固に,我々の日常体験の基本的な部分を規定するまでになっている。したがって写真の価値を様々な位相において評価し,保存していくことは,今日の我々に与えられた課題の一つと言えよう。このことは写真が発明された19世紀中葉以後に制作された写真が,適切な管理によって数多く残され,われわれが当時の記録や芸術家の作品を見ることができる簡単な事実によっても強調されるであろう。写真の保存と管理技術への興味は,近年の写真の有用性と重要性に対する関心の高まりと無縁ではない。広い意味での「写真の保存」とは,写真の重要性に対する広い理解を確立させる努力であると定義することが可能である。しかしあらゆる未開拓な分野がそうであったように,写真の保存と管理のプログラムを確立しようとする試みは,無数の個別的な努力によって開始されたものであった。例えば職業上の責任と研究から(ギャラリー,美術史家,批評家,美術館員,等),写真を使用する上での経済性の立場から(出版,写真産業),需給関係によって高まった写真の交換価値によって(写真市場),個人コレクターや一般の愛好家などの全く個人的な趣味によってなど,その動機と目的は多用なものであった。写真の保護,保存に関心を持つ人々の増加は,写真の評価やその保存・管理に対する統一的な見解や基準をもたらすかに思えるが,しかし今日に至るまで何等かの結論は得られていない。なぜならその目的によって写真への評価,保存・管理に対するア-165-
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