(2)天井格縁と隅亀の尾・天井廻縁はほぼ同一の彩色法になる。とくに美しく彩られた隅亀(3)天井長押には白土地に牡丹の唐草が鮮やかに描出されている。花は各面に完形が三個,(4)天井長押が具象的に牡丹唐草を描くのに対して,内法長押見付けには抽象的な宝相華文ていないので確証できないが,肉眼による観察結果から,朱・群青・緑青・白土および鉛白・墨の使用は確かと見られ,このほか橙色系の顔料は丹にしてはやや赤味が強すぎるようにみられた。しかし,以下の既述では仮に「丹」としておくこととする。(図版参照)(1)外陣および内陣天井支輪裏板は近世の修理により,彩色文様はない。また,天井組子・蛇骨子・小組は剥落が甚だしいが,簡単な宝相華文様が施されている。の尾についていえば,見付けの下方および天井格縁との接点に宝相華文様をおき,両者の間を奇雲糊の帯文様とする。宝相華部は地を丹とし,花弁を群青・葉部を緑青の標糊で表している。この地の丹はやや赤味が強い。帯文様は中心帯を墨とする群青六段績糊で,墨帯上に切箔を点綴している。隅亀の尾の側面も群青績掴の帯文様とするが,各面の境界に朱帯を引いて色彩を引き締めている。両端に半形が二個づつ配当され,朱線で輪郭された花弁は三山形,各花弁は群青の四段標網(中心より群青・白群・白群具・白)である。外側を白く彩るため,花は背景地の白色にとけ込むかのように柔らかく咲き匂い,緑青で細くしなやかに左から右へ描かれた唐草が驚くほどに新鮮な印象を与えている。この面の上下は緑青線によってあたかも額縁のように縁どられ,牡丹唐草の絵画的性格が強調されるが,赤系の色がわずかに花の輪郭のみに用いられているため,清潔感のある,しかもみずみずしい画面効果をきわめて巧みに表現しえている。この牡丹唐草は,本荘厳画における大陸美術の影響関係を察するひとつの鍵となろう。天井長押下面は群青緩網による帯文様で,同じく群青系帯文様を持つ内法長押に接続している。様を表している。宝相華文様は長押中央部と両端部とでは異なる。すなわち中央部では,中心に四個の珠を緑青緩糊で表し,これを朱を中心とした帯で囲む。さらにこの四方に三山をなす湧雲形を群青纏糊帯で描き,各湧雲形の中心部に朱を塗る。そして,これらを囲むように花弁状に緑青帯を巡らせ,湧雲形との間にできた隙間を丹で埋める。さらにその左右には三山形を群青麒網で描き,その先に緑青の台座をもつ宝珠をつけるが,この宝珠は群青の標網を朱で囲んだものである。同種の宝珠はさらに左右に二個づつ描かれている。長押両端の宝相華は角に当たるため半形で,隣の長押と接することにより文様を完結させる。やはり中心は四個の宝珠で,緑青の五段緩糊の中心を白とし,さらに朱点を置く。-169-
元のページ ../index.html#193