* (1, 2は同一のものか?)2 仙客独釣図考槃社支那名画選集2所載款「小遷」,印「呉偉」上記の作品の内,*印のものは写真および図版資料の入手が可能なもの(目下,注文中のものを含む)であるが,落款•印章などの詳細な部分写真(原寸あるいは,それに近いもの)については,現時点では入手が困難であるものも多く,今後の課題となっている。目下,これらの写真資料および図版資料を整理中であるが,整理の完了には,なお時間を要すると思われる。言うまでもなく,上記の作品全てが,真蹟というわけでは無く,実際に調査したもののなかにも,かなり疑問とすべき作品が多く,この最も基本的な真偽の問題は,今後の未調査作品の実調査とともに,時間をかけて持続的に解決していきたい。国内に所蔵される作品は,これまでに大部分を調査済みであるが(この一年間に,京都,大阪等の関西方面,山梨,新潟および東京周辺の調査を実施した。),国外,とくに中華人民共和国に所蔵されるものについては,大多数の作品が未調査であり,近い将来に調査旅行の実施を実現し,研究の進展をはかりたいと考えている。次に,文献資料についても,継続的な収集に努めたが,この一年の間にも,例えば「文物1987-3」に紹介された明時代の王鎮(1424-95)夫婦合葬墓より発見された呉偉と近い時代の浙派の画家である李在の作といわれる山水図巻は,従来,浙派とは無縁と思われていた文人の好む米法山水画風のものであり,この新資料は十五世紀の浙派,即ち,呉偉の時代の浙派の再検討を促すものといえる。この種の資料は,今後とも中国側より更に公表されることが期待できる段階にようやく来ていると考えてよく,今後の資料収集の充実を期している次第である。上述のように,現在のところ,本研究は,ようやく,その基礎固めを果たしつつあるところであり,今後,収集した資料の整理・解読・内容の吟味を急ぐとともに,未調査の作品・文献資料の調査をできるかぎり実行したい。本年中をめどとして呉偉に関する基本的な年譜,作品目録の作成を一応完了させ(ただし,国外の未調査作品については将来の課題とする。),引き続き数年をかけて調査研究を呉偉周辺の南京の画家たちにまで押し広げていき,研究課題「呉偉と南京画壇の研究」を完成させたい。(昭和63年5月記)-203-
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