4.幕末,明治初期における来日欧米人による出版物についてBreton Le J apon : ou moeurs, usages et costumes des habitants de cet empire, Paris 1818, 4 vol.(日本,もしくはこの帝国民の風俗,慣習,衣服)1818年という開国より40年も早い時点で出版されながら,カラーの図版によってChassiron Notes sur la ~ Karis, 1861(日本,中国,インAlcock Art and Art Industries in担匹gLondon, 1878(日本の美術と美術産業)との可能性がでてきた。高島はおそらくこの装飾のためにオフィシェ・ダカデミー勲を受けたと考えられる。リモージュで今後調査を行う予定である。日本に関する書物は,当然のことながら開国以降が圧倒的に多い。初期の来日者たちはこぞって紀行を著し,日本の歴史,風俗,政治,経済,自然,文化,芸術などについて記述し,それらが欧米人にとっての日本のイメージを決定的にした。とくに美術に関しては,そこで紹介された作品が欧米人の好みを方向づける役割を果したことは否定できない。こうした芸術に対する記述,複製図版の早いものは,開国後のみならずそれを以前にも出版されており,日本に関する知識の伝播を知る上で興味深い。今度の滞在中,横浜開港資料館のブルーム・コレクションにおいて,こうした文献を多く見る機会を得た。それらの中で特筆すべきものを挙べると,以下の通りである。吉原の遊郭の風俗を紹介している点が興味深い。もとになったのは奥村政信の肉筆と想定できる。但しテキストではこれらを上流家庭の風俗と誤解している。これらの情報はオランダ商館館員や,ロシア人捕虜ゴローニンから得たものと考えられる。他にCossigny(1799), Golownin (1818)等開国以前の書物があるが,図版はない。図版に関して重要なのは,ド紀行)これは最も早い時期に日本に来た外交官によるものだが,北斎漫画,岳百景等の忠実なファクシミリをフランスではじめて出版した意味は大きい。著者は自ら1858年にこれらを購入し,そのコレクションは今日ラ・ロシェルの博物館にある。著名な『大君の都』ですでに風俗等の紹介に,北斎の版画等を利用しているが,この本では専門的に美術の特質について論じている。扱う範囲は,絵画から工芸に及び,その工芸においても素材別の技法の説明などかなり詳しい。図版も豊富_ 223-
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