で細部がよくわかるものである。建築についての最も早い紹介の一つであり,写真をもとにした建築物の紹介,北斎や光琳の紹介など,非常に体系的である。日本の陶芸の各地方による特色等を説明している詳しい書物,1878年のパリ万国博覧会出品作で,ロンドンのサウス・ケンジントン博物館で購入されたものなど,今日でも追跡できる作品の図版を多く紹介している。全体の流れからすると,1858年以前から日本に対する関心は様々に芽生えており,ほとんどが二次資料(シーボルト,ティツィングらの著書)を使ってアプローチを試みていた。開国後,1860年代の書物は比較的図版が少なく,また中国まがいの挿図なども加わっているが,それでも視覚的に何らかの影響を与えることができる。特にシャシロンの本はオリジナルに忠実なファクシミリを掲載している点できわめて重要である。翻訳が多く出て,日本に関心を持つ人にとってば情報は非常に手に入れやすくなった。また写真をもとにした銅版画などの挿絵も盛んになり,視覚的に忠実なイメージを伝えている。今までのジャポニスム研究は,漠然とした類似を指摘するにとどまっていたが,日本に関する視覚的情報を,欧米人画家がいつ,どのように手に入れたか,をさらに詳しく調べる必要がある。それには,初期の滞日欧米人の著書の果した役割は大きいと考えられる。なお,今回参照したものの中で,邦訳がある文献はと〈に取上げなかった。Dresser ~ Art and Art Manufactures London/New York 1882(日本及びその建築,美術,美術産業)Franks ~ London 1880(日本の陶芸)1870年代には,筆者の関心が次第に分化してくる傾向にあり,また英語一仏語間の-224 -
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