30日パリ,シャルル・ド・ゴール空港発研究報告:I)作品調査今回の調査の具体的対象は主に次の2観点に基づいて選定した。まず,1)最も完成された「プラトー構図」を示し,交流史上重要な鍵を握る『傑刑』(ヴェネツィア,カ・ドーロ)がヤン・ファン・アイクの弟子(Hグループの画家)の手により,1442年頃,しかもイタリア(パドヴァ又はヴェネツィア)で描かれたに違いないとするA.Chateletの仮説(UnCollaborateur de van Eyck en Italie. で最も説得力を有し,また交流史の重要接点を1440年前後,パドヴァを中心とするヴェネト地方と想定し,調査に対する地理的時間的限定を我々に与えてくれるものである。2)次に,我々が以前より着目している次の3つの作例ープレデルラ断片『悲しみの人キリスト』(ヴェローナ市立美術館,近年G.Marchini. Filippo Lippi, Milan, えられた),スクァルチオーネ作,半身像『聖母子』(ベルリン・ダーレム絵画館)及びフェルラーラ,失なわれたエステ家ベルフィオーレ宮殿書斎装飾は,ともに北方起源が予想され,かつ50■60年代以降北イタリアに急速な普及をみる一連の風景に関する構図(「プラトー構図」のヴァリエントと見倣しえる)…“祭壇ないし人物の背後に背景backdropとして広がる風景”,及び“窓外の風景”を持つ最も早期例である。それ故これら3点の周辺作品の調査及びそれらに至る過程を示す作品群の解明が主目的となる。さらに,同じく北方起源である空気遠近法にもとずく澄明な空の出現,ロヒール的,平和な田園風景図像の出現にも留意し観察を行った。なお,調査した作品のうち,重要作品は,ヴェネト地方美術,歴史文化監督局(Soprintendenzaper i Beui 調査を行った美術館及び聖堂;ヴェネツィア;ヴェネツィア派伝統工房からジョヴァンニ・ベ1レリーニの澄明な田園風景へと至る過程作品を見出すことを眼目に観察。まずカ・ドーロにおいてファン・アイク派『傑刑』及びジョヴァンニ・ボッカチ作『傑刊』を比較分折。アカデーミア美26日ローマ;サン・クレメンテ聖堂Melanges en l'honneur de Mademoiselle S. Sulzberger, Bruxelles, 1980)は現時点1979より,ャーコポ・ベルリーニにかわってフィリッポ・リッピ作品と同定の修正が加artistici e storici del V eneto)の許可を得て写真撮影を行った。-237-
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