X線回折による染色織物の顔料分析• D. Rebins,他;イギリス• J. Cejka,他;チェコスロバキア・Y. S.Kim;韓国C-13フーリェ変換核磁気共鳴吸収スペクトル韓国で発掘された陶器,中国賃幣等の分析粉末X線回折及び赤外線吸収スペクトルによる古代ブロンズ環境調査絵画技法の科学的解明は,前回からこのグループの国際協力課題となったものであるが,各種の器機分析により得た絵画の素材や技法についての新しい情報が報告された。中でも,フランドル派の絵画技法を研究する小グループが,今回は興味ある発表を行った。その一つ,ピエロ・デラ・フランチェスカのブレラ美術館所蔵品「聖なる会話」の試料を各種科学分析により調査して顔料の判定を行ったり,クロスセクションの各層に対し蛍光スペクトル微量分析を行って媒剤を解明し,ピエロの晩年作とフランドル派の関連性を証明した論文は高く評価された。この種の研究は,よりよい修復のために多くの基本的資料を提供するだけでなく,美術史家に対してもスタイル確立の上で美術家が関わりを持った部分を証明する資料を提示できる重要なものと思われる。分析方法では,C-13FTNMRを用いた研究,透過型電子顕微鏡(STEM)によるチタン白の分析などが,従来になかった最も新しい研究であった。筆者の行った日本の油彩画に発生する結晶の分析に関する発表は,分析方法のユニークさより,はじめて紹介された劣化の例として話題を集めた。質疑は時間の関係で1人許された。彼はアメリカの美術館で類似した結晶を発見,結晶は硫酸マグネシウム水和物でありニスの下にのみ存在したことを報告した。日本の場合のような画面を破壊する結晶を見るのは初めてであり驚きであるとも付け加えた。ラーニエ氏は,この問題は重要であるので,国際協力のもと早くに解決されねばならないと語った。発表直後,イギリスにも結晶発生例があるとして,Dr.K Groen女史(英)から共同研究の申込みがあった。大会期間中,オーストラリア原住民芸術である石材文化財見学,オーストラリア術館,州立近代美術館の見学,市内修復研究室への訪問が用意されていた。-254-
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