鹿島美術研究 年報第5号
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図1小林徳三郎「静物」に発生した結晶9月14日からのセミナー「現代の材料」は,会場をオーストラリアの首都であるキャンベラ市に移して行われた。修復に用いられる合成樹脂の劣化,天然ゴムの劣化に伴う美術品への害,建築材料の劣化と現境汚染などについて活発に討議された。現代材料の劣化と美術品への影磐の重大性が深〈認識され,今後,世界的な研究の交流を計るため,ICOMのグループとして新し〈加わることが提起された。帰路,この機会を利用して,熱帯地域における美術品の保存状況を観察するため,インドネシアに立寄った。ジャカルタのアダム・マリク絵画館では,油彩画室を見学したが,展示に関する知識が導入されておらず,ピニールでカパーをしてある油彩画が目立った。ほとんどの画面に微の発生があった。照明も紫外線を含む螢光灯が,皓々と使われていた。国立美術館のほとんどの室と染色美術館も,保存を考慮した近代的展示がなされておらず,ただ,多くの番人が立ち並んで,看視しているのみであった。高温多湿の気候の中での,文化財を守る方法の導入が急がれねばならないことを痛感した。筆者は,かねてから懸案になっていた「プロンズ彫刻の保存」についての研修会を,来年の日本における国際保存学会の時期直前に開きたいと希望した。会識出席のため来日する.すぐれた欧米の専門家に,講師を依頼することが可能になるからである。今大会中にその購師依頼を打診し,アメリカのP.Weil氏,B.Milan氏,T.Chase 氏から,全面的協力の約束が得られたことは,期待していたこととは言え,喜ばしいことであった。図2上記結晶の顕微鏡写真(45倍)-255-

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