いなかったのである。この例の場合,ゴッホがその問題の箇所において,この作品の題名をはっきりと挙げていないため,これまでの研究者の目から逃れていたのであるが,一般に書簡の中での作品の言及は,今日我々が呼んでいるような題とは異なる名で,しかも幾通りもの違う名称で行われていることも多い。本研究は,ゴッホの書簡に出てくる彼の作品に関する言及をすべて収録,相互に比較し,作品自体と対象する作業を,近年,文化系の研究者にも使用しやすくなってきたパーソナル・コンピューターの助けを借りて,できる限り完璧に行うことを目指し,昭和60年度から3年計画で着手されたものである。この研究は,現在ようやく基本的準備を終了して,本格的なデータ入力をを開始したところであるが,今回は,このようなアプローチの可能性とその技術上の諸問題について報告すると共に,ゴッホの制作時期の中からオーヴェール時代を例として取り上げ,具体的なデータがどのような形で利用可能であるかを紹介したい。-20 -
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