8.殷周青銅器の装飾の研究9.古代末・中世紀インド美術の研究像の歴史的変遷を明らかにすることを目的とした基礎的研究である。—二里岡上層期の青銅器の装飾ー一青山学院大学研究者:文化女子大学他非常勤講師末房由美子研究目的:殷周青銅器の研究は専ら,歴史学・考古学・古文字学など,断片的に個々の意味が追求され最近は鋳造技術方面,金属内容分析方面の研究も盛んである。ひとり,体系だった美術史的見地が稀薄である。本調査研究はこの点を補おうとする方向にある。具体的には二里頭期より戦国時代に至る約1300年間の青銅器の装飾の変遷を明らかにすることをめざすもので,今回の目的はそのうち殷後期に先行する二里岡上層期の青銅期の装飾の実態を明らかにし,殷後期青銅器の装飾との相異,その意味するところなどを中心に二里岡上層期青銅器の装飾の特質を考察することである。ここで装飾の視点を導入するのは次のような理由による。殷周青銅器の造形美は器形と装飾から形成されている。装飾は意味をもった様々な意匠の文様を器形との関係を考慮して器体に施した状態をさす。器形や文様は青銅器の一部であったり,青銅器から離れて存在するが,装飾は器形とも文様とも深くかかわり,一個の青鋼器を造形する際の指導的役割を果す。装飾は青銅器の造形の鍵を握るものなのであり,制作者の精神を意図的な面も予期しなかった面も含めて反映しているはずなのである。装飾の視点を導入することは青銅器の造形や存在に関する本質的な理解を助けるものであると考える。二里岡上層期をとりあげたのは昨年の“初期”に続く時期であることによるが,銅器1300年の歴史上最も高い造形美を示す殷後期青銅器の直前の段階であり,その器形と装飾がまさに形成されていく過程にふれることになる点で特に重要な意味をもっている。一実地調査を中心に一研究者:京都市立芸術大学講師定金計次-29-
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