15.室町時代土佐派作品の調査研究16.周防国重源事蹟の調査研究ることが本研究の目的である。ー中世後半期におけるやまと絵の展開一研究者:東京国立博物館美術課絵画室長村重研究目的:室町時代のやまと絵に対する関心は,近年,急速にたかまりつつある。近世初期の華麗な障壁画群に連なり,むしろそれらを先取りする存在として,室町時代のやまと絵が想定されるようになってきた。もはや,室町時代のやまと絵をぬきにしては,日本の絵画史を一貫としたものとして語ることはできないといってもよい。それにもかかわらず,室町時代のやまと絵作品そのものの研究は,単発的な紹介論文の発表を除き,ほとんど進展していない。あまりにも多種多様な作品が伝存する一方で,過去の研究の蓄積が乏しく,作品を整理・分類する基準すら定まっていないからであろう。特に,当時のやまと絵を全て土佐派に帰する安易な態度が混乱を一層大きくしている点は否定できない。こうした状況にあって,現在最も必要とされるのは,土佐派そのものの作品を具体的かつ総合的に調査し,その様式や特質を把握し,研究の基盤を固めることであると思われる。すなわち,この研究の目的は,室町土佐派の作品研究を通して,まとまりのつきにくい室町やまと絵の研究に一つの着実な基盤を提示し,併せて室町やまと絵の史的価値を再確認することである。研究者:九州大学文学部教授平田研究目的:中世美術において,俊乗房重源のはたした役割は非常に大きい。しかしその検討は東大寺を中心とする畿内における事蹟を対象とし,また宋風文化の受容を中心に論じられているように考えられる。これにたいし,本調査研究は周防国における事蹟を対象としていて,重源以後の周防の中世文化の形成と継承をも考察しようとするものである。したがって本調査研究は,単に重源研究の欠を補うのみでなく,中世地方美術研究の新しい視点をつくり,さらに将来,美術史から発して山口地方の中世文化全般についての研究に波及する性寛ほか11名(共同研究)-34 -寧ほか3名(共同研究)
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