25.九州在銘彫刻研究に,料紙装飾に秀れた作品を残す俵屋宗達の様式を検討する上では,看過できない分野であり,この分野から絵画研究へのアプローチが可能なことは,従来の宗達研究によって実証されている。また,当時,土佐派や狩野派の画人達もこの分野の仕事をしており,残された作品も少くない。これらの作品を比較検討することによって,絵画史上の未解決の問題に,例えば両派の交流関係など貴重な資料を提供できると予想される。24 ・中世大和絵における中国絵画の影響に関する研究研究者:京都国立博物館美術室員(技官)若杉準治研究目的:これまで,個々の作品の研究が中心であった中世大和絵の作品群に,画風の展開をあとづけるという作業は,これからの大和絵研究において最も重要な課題であると思われる。ところが,それぞれに個性的であり孤独的であるとさえ言われるこれらの作品群を系統的に整理することは意外に困難である。この作業のためには,いくつかの視点から作品全体を見渡し,それぞれの視点から導きだされた系統を総合的に考察するほかはないと思われる。そこで,その一つの視点として「中国絵画の影響」をとりあげることにした。それは,絵巻画風の研究の中で,大和絵の自律的な展開のみでは理解できない現象(例えば,墨跛や墨最という独持の墨の用法など)があり,それが新渡の水墨画の影響であること,そしてそれらの現象は一つの作品に特異的に現われるのではなく,大和絵の画風展開の大きな要因の一つであると考えられることに基づいている。したがって,この中国絵画の影聾を広い範囲に亘って,より分析的に検証し,影響(導入)の契機,具体的な現象,同化の過程を実証的に追求することは,画風の展開を系統づける上に大きな意味をもつと考えられる。そして影響の深浅の意味が明らかになるならば,大和絵の制作環境の問題へと発展しうると思われる。研究者:九州歴史資料館(太宰府町)参事補佐八尋和泉研究目的:-39 -
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