刊中世小説』(昭和22~31),横山重•松本隆信『室町時代物語大成』(昭和48~続刊中)町時代小説集全』(明41),島津久基『近代小説新纂』(昭和3)'笹野堅『室町時代短編集』(昭和10)'横山重・太田武夫『室町時代物語集』(昭和12-17),市古貞次『未など多くの成果を生んだ。しかし,これらの諸書は本文を中心としたテキストの分類が主であり,絵をともなう作品のうちでも,掲載された図版は1■ 2図にとどまっている。また同様の主旨で,お伽草子の諸本は松本隆信氏によって『増訂室町時代物語類現存本簡明目録』(「御伽草子絵の世界』奈良絵本国際研究会議編,昭和57,所収)にまとめられ,今日の研究の基本的参考文献になっているが,その後の所在の移動にともなう訂正や新出の作品の増補が不可欠である。このように美術史の立場からは,これまでの研究を利用するには支障が多い。本来,物語は,絵とともに鑑賞されてきたが,お伽草子のように広い享受者層と想定できる作品群においては,より直戟的で簡潔な表現効果をもつ絵の有する意義は大きい。以上の理由から本調査研究では,国文学におけるお伽草子研究の成果をふまえ,それらの不備を補いながら,新たにお伽草子絵を対象にした現存目録を作成することを目的とする。38.六道絵における説話の受容とその表現研究者:兵庫県立歴史博物館学芸員菅村研究目的:六道輪廻の思想は,浄土思想と結びつき,日本の仏教の生死観を示す最も重要,かつ普及した思想である。各種文献からも知られるとおり,平安期以降,多くの六道絵が制作されてきたことは,その証しであろう。現存する作品がそれほど多くないが,その欠は,六道絵の周辺絵画である地獄極楽図・十王図等によって補うことは可能であろう。現存する六道絵について,思想面からのアプローチが多く行なわれてきたが,実際の画面上の各モチーフや内容把握については,まだ十分とはいえない。このような状況のなかで,近年,説話を描きこんだ六道絵(極楽寺本)が発見され(この作品に関しては,美術史学会第40回全国大会において口頭発表した),六道絵が展開していく過程において,説話の受容が大きな意味をもつことが予想されるようになった。亨-48
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