(2)国際交流の援助2.近代百年中国絵画,画家資料の収集と研究1.焔肩仏及び蓮華天井図に関する欧米・インド所在の中央アジア美術の研究研究者:上智大学助教授土谷遥子研究目的:インド初期仏教美術に存在しなかった仏像が西北インドのガンダーラでクシャーン統治下に誕生したと言われるが,仏像の図像の発達に従って既にあった中インドの特色とともに,西北インドが西方から受けついだ古典的要素,更に統治者の遊牧的性格が加わって,固有の特色がみられるようになった。中でも,ガンダーラとアフガニスタンの仏教美術の相違の中に,アフガニスタンに於ける遊牧的要素の発達が顕著になる。その例としてカピシ地方の焔肩仏を中心に“烙”のモティーフを始めて光背に用いた作品があげられる。又,ハイバクの石窟寺院第一洞には,ドーム式天井を連辮辛の浮彫でおおう例が,インドのアジャンタ石窟寺院と西域のクチャに残るクムトラ,キジル等の石窟寺院の天井図との関連を示唆している。以上仏教美術の発達の過程にみられるインド,非インド的特徴を体系的に理解することに新たな問題を提起したい。クシャーン朝の美術についてはDr.J. Rosenfield, Dynastic Art of the Kushanを始め多くの先学の研究があるが,トルキスタンの美術との関連に於いて比較研究を行うことによって,より明解に問題に焦点がおかれるのではなかろうか。更に蓮華天井図については,ハイバクの石窟寺院が京都大学の水野清一氏編の調査報告書に発表されて以来(1962年),近年には西域クムトラ石窟寺院に於いて,新発見の石窟も発表され資料も増えているが,未だ比較検討が行われていない。クチャの余り知られていないシムシム及びアチグイラクの遺跡で発見された例も含め,アフガニスタン及びトルキスタンの文化の交流の一端を明らかにしたい。研究者:東京国立文化財研究所写真資料研究室長鶴田武良研究目的:申請者は10数年前に近代中国絵画研究に着手したが画家人名辞典をはじめ基礎的な資料が全〈ないこと,及び関係文献が甚しく散在しているため,研究を進めることが困難であることを痛切に感じ,以来,画家カードの採録文献の収集を第一目的として-50 -
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