(1) 橋本コレクションを中心とした中国近・現代画の研究研究者:奈良大学文学部教授古原宏伸研究報告:対象とする近・現代の中国絵画の調査については,昭和62年,7, 8, 9月の暑中休暇を主として集中的に行った。1回に約30点,総計16日にわたって,観察ノートを記録し,全作品について,全図,部分図,落款印章,題践などのスライドと白黒写真を作成した。尺寸などの実測も含てめ,調査と機材の操作,撮影には,当時大阪大学大学院生,吉田晴紀君(現在黒川古文化研究所研究員)の全面的な協力を得た。年記,落款,印章,題践はすべて釈文解読し,記録として整理し,いつでも印刷に付せるように,完全原稿を作成した。約七百枚を超え,一部判読に苦しむものは,昭和62年,10,11, 12月に再び橋本家を来訪して,再調査を行った。写真,スライドの整理については,奈良大学文学部,文化財学科二回生(当時)川崎裕美子女史を煩わした。作品の記録には長大な時間を費したため,研究の最終目的である個別研究と年表の作成には,まだ至っていない。しかし,調査対象とした四百三十点の近・現代画は,明年昭和64年秋に,東京都渋谷区立松濤美術館で特別展の形で展示されることが,本年2月に決定した。松濤美術館(藤田国雄館長)は,これまで橋本コレクションを逐次展示していて,その特別展は,昭和59年には明清時代の中国画を,61年には来舶画人(長崎派)を,62年には中国の墨竹画を陳列し,図録を刊行してきた。近・現代画の部門については,当初計画がなかったが,古原が鹿島美術財団の研究助成を受けて調査しているとの報告によって,明年度の特別展企画に充当することに決定したものである。古原は上述の三回の特別展図録の巻頭論文を常に執筆してきたが,橋本コレクション紹介のいわば有終の美ともいえるこの企画にも充分な資料を提供し,協力する意図をもっている。従ってこの研究については,渋谷区立松濤美術館特別展の図録(昭和64年10月刊行)収載予定の論文をもって報告に替えたい。同展観については,同館員の味岡義人氏と連絡協議ずみで,会期の前半を呉昌碩とした近代絵画,後半を斉白石を中心とした現1.調査研究の助成-65-
元のページ ../index.html#89