古い時代を知る職人，作家，会社の話を集める作業はまだ緒についたばかりであるが，文献収集の継続と合せて調査を進め，今後さらに日本近代ガラス工芸の展開についての考察を続けてゆきたいと考えている。ここに，今回収集し得た文献をもとに作成した年表から主要な項目を抜粋して参考に供したい。1870（明治3)京都府知事，横村正直，舎密局を置き，陶磁，硝子，染織，石鹸等の製造業を起こす。1873（明治6)丹羽正庸，村井三四之助，太政大臣三条実美の援助を受けて東京府下品川に洋式硝子製造所，興業社を創立。佐賀藩精錬方で硝子製造に従事していた藤山種広，ウィーン万国博覧会に随行し，同地で活字，硝子，鉛筆製法の技術を実地で研修して帰国する。1874（明治7)文政の頃より江戸で硝子製造業を営み，切子や，薬品にも耐えうる硬質硝子の製造を行っていたことでも名高い加賀屋久兵衛没す。その子熊崎安太郎，弟子の井野磯蔵，沢定次郎らがこの業を継ぐ。1875（明治8)伊藤契信，大阪府西成郡天満山に硝子工場を設立。1876（明治9)政府は経営難の興業社を買収し，工部省品川硝子製作所を設立。トーマス・ウォルトンらイギリス人技師と，藤山種広の指導のもとで，舷燈用紅色硝子，模様硝子，小板硝子の試作に成功する。1877（明治10)第一回内国勧業博覧会開催一薬瓶，玉製品，眼鏡，レンズ，理化学用具，食器，燈ろうなど，約209点のガラス製品が出品される。1879（明治12)破璃製造人組合設立。1881（明治14)品川硝子製作所，懸案の板硝子製造に着手するが，翌年中止。第2回内国勧が博覧会ー東京，大阪，愛知，新潟，長崎から総数約624点の出品があったが，そのうち268点は品川工作分局からの出品であった。多くは切子の食器，瓶，理化学用具，ランプ，強酸にも耐える大小の瓶など。1883（明治16)伊藤契信，大阪に日本硝子会社を創立，品川硝子製作所で満期解任になったイギリス人技師，スキットモール，スピードを指導者として雇う。（明治23年解散）岩城滝次郎，独立して硝子器具工場を持つ。1884（明治17)工部省，稲葉正邦，西村勝三に10か年を期として経営委任し，に品川硝子会社設立する。（明治25年解散）、、しー、一_103-
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