2.今回の調査で認識を新たにしたことは,明治美術教育における英国美術教材の重from the finest modern ~alleries of Great Britain & Melbourne. XCMII及びA.F.GraceA Course of Lessons in Landsca匹Paintin_gjg__Qfu. Cassell & Company, Limited. London, Paris, New York & Melbourne. 1885 2nd ed.である。両方共,森三美の印鑑が押してある。前者は正3.今回の調査のもう一つの収穫は,日本の画家によるヴィクトリア朝絵画の模写をJohe Everett Millais "The Knight Errant"下村観山模写な美術史観から見れば,黒田清輝を始めとする明治洋画のフランス憧憬はもっともなことであり,モダニズムの発展に寄与することの少なかったと見られま英国ヴィクトリア朝絵画の影響が過小評価される傾向があった。しかし明治時代に生きた人々の立場から見れが,文化大国であるイギリスの美術から学ぼうとすることは,不自然なことではなかった。要性である。イギリスでは,特に1850年代頃から美術に関する教育書・啓蒙書・ハンドブックの類が多数出版されるようになる。これらは,イギリスで発行された多くの画集と共に,日本では,他国のものと比べて,手に入り易かったと思われる。日本で洋画を志す者が,これらの出版物を利用した。実際のケースの幾つかを,実見することができた。特に興味深かったのは,久留米の石橋美術館に保管されている,2冊の森三美旧蔵本である。これらは,TheNation's Pictures. A selection 力美術館旧蔵で,森三美に教えを受けた坂本繁二郎によばれ,森はそれを教科書として使ったということである。この本にはAlbertMooreの“Blossums"が色刷りで出ており,同じく森の下で学んだ青木繁がこれを見ているということになる。後者は,坂本の所蔵本となり,現在坂本家から石橋美術館に寄託されている。9点のカラー以外は白黒の挿絵が有り,質はあまり高くない。特にカラー版は,ファクシミレとは言い難く,色もけばけばしく,原画を描きなおした粗悪な物である。それでも石橋美術館の橋本博喜氏の指摘されるように,この本の挿絵Fig.13は坂本繁二郎の「秋の朝日」(1899年)に明らかに影椰を与えている。この他にも,フランス帰りの画家でさえ,日本でイギリスの教材を使ったケースも有るようだが,これは更に調査を要する。幾つか確認出来たことである。好例として下記の2点をあげたい。re~. Cassell and Company, Limited. London, Paris, New York -106-
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