鹿島美術研究 年報第6号
133/304

W,F,Yeames "And When Did You See Your Father?"五姓田義松模写(この件に関しては神奈川県立博物館の横田洋一氏にご教示頂いた。)4.明治洋風建築が英国に影響を強く受けたという事実は,一般にも広く認められている。なかでもジョサイア・コンドルは,中心的な存在である。このコンドルが日本の洋風建築にオリエント的要素を導入した事実の理論的背景について,今回日本滞在中に口頭発表する機会を得た。これは後ほど出版される予定である。コンドルは,暁斎について日本画を学ぶが,彼の日本画の実例を幾つか確認できたものも収穫であった。その他辰野金吾,武田五ーに関しても英国と関連する資料を得ることができた。5.最後に,もうひとつの重要な分野で,今回の調査で特に収穫のあったものとして,デザイン・工芸における日本とイギリスの関係を挙げたい,鹿鳴館ブームといわれる欧化現象の中で,ヘアー・スタイルひとつをとりあげてみても,イギリスむすび等に見られる様に,イギリスの影闊は強かった。中でも横浜と神戸では英国文明の影閻が顕著である。もう一方では,日本の伝統工芸も,明治の西洋ブームに対処しようとした。例えば伝統的な織物を洋館のカーテン等に応用したりする。同時にそれを西洋に輸出することも試みられた。これらの実例を,高島屋資料館及び川島織物文化館で見いだすことが出来たのは収穫であった。特に1910年の日英博覧会に関する貴重な資料を,上記の両館で得ることが出来た。この他インダストリアル・デザイン,ポスター等の分野でも新資料を得た。12.マエストロ。デ。カベスタニの作品に関する様式史的研究研究者:筑波大学芸術学系助手菊地章太研究報告:本研究は,12世紀後半にスペインのカタルーニヤ地方を中心に活動した逸名の彫刻家「マエストロ・デ・カベスタニ」の作品について,研究の基礎となる資料集成的な作品目録(コルプス)の作成を行ない,これをもとに作品の歴史的展開の在り方を様式史的に明らかにすることを目的とするものである。報告者は,1988年8月1日より1ヶ月間,下記の教会,修道院,美術館等において,マエストロ・デ・カベスタニの作品に関する調査を行ない,現状の記述,写真撮影,関係資料の収集等を行なうことができた。_107

元のページ  ../index.html#133

このブックを見る