味趣戸江~京劉東涼(画画筆版肉ヽ゜゜このように浮世絵趣味を図に示すと次のようになる。多くの場合浮世絵研究は、芳年・国周・清親を最後の浮世絵師として紹介し終わる。だが彼らの画績は次代へとしっかり受け継がれてゆく。芳年の画系は美人風俗画を中心に年方を介在して清方・蕉園から深水へ、役者絵は国周を経て耕花・春仙へ、風景画は清親から巴水•吉田博へと、装いを変えつつ、蘇生するのである。アメリカコネチカットのロバート・ムラー氏のコレクションは、美人画・役者絵・風景画、あるいは花鳥画などの浮世絵版画のジャンルが、明治・大正・昭和という時代の流れの中でどのような変貌を遂げていったのかを知る貴重な内容を有している。ムラー氏は、木版の持つ、洗練・繊細・鮮明な性質を好み、大系的に近代木版画の流れを追っている。彼のコレクションには文明開化を描く作品がほとんど含まれていない。そこにはニュース性はあっても、木版そのものの美しさは感じられないからであろう。今回の調査のひとつとして行ったムラーコレクションは、芳年・国周・清親からはじまる新版画の流れを特徴づける意味でもきわめて貴重なものだったといえよう。ともあれ浮世絵を介在させつつ新しい芸術の創造を試みる若き芸術家たちが、モダニズムヘ向かう時代の流れの中で、ふと足を止めて失われた江戸の面影を求め、明治近代が果たした意味を改めて考える時期をもったということを看過せずにおきたいと思う。それは、絶望・夢と現実の中で揺れ動いた大正という時代そのものの性格をもあらわしているように思われるからである。趣絵世浮____ -112-
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