鹿島美術研究 年報第6号
161/304

また「聖ニコラ伝」は,上院の「璧フランチェスコ伝」の後半場面の影響が明らかであり,『執政官を許す聖ニコラ』の画面右半分の背景を占める教会のモティーフが,先にも触れたように『聖キアラの哀悼』から採られているのは言うまでもなく,『難破から船を救う堂ニコラ』の中の船の帆を操作しているらしい人物の姿態(図5)が,やはり同じ『聖キアラの哀悼』の木に登る少年像(図6)を再び繰り返している。既にこの木に登る少年像は,M・R・フィッシャー(1956)によってパドヴァの『イェルサレム入城』からの引用であることが指摘されている。そしてアッシジの「聖フランチェスコ伝」の後半場面が,パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂壁画の制作とほぼ同時図3図1図2-135-図4

元のページ  ../index.html#161

このブックを見る