鹿島美術研究 年報第6号
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究は,現在の所あまり類例がないものであります。本研究は,当初かなりの部分において視感測色により測定する予定でしたが,視感測色に依る場合のバラッキ,荒さをさける為,ミノルタ「CR200色彩色差計」により計測することにしました。方法は,ドウサ引き白麻紙の上に鹿ニカワでもって数回塗り重ね,発色した色紙を制作し,それを色彩計でもって任意の5ヵ所を測定しました。データは,色相・明度においては,5ヵ所の平均値を取り,彩度においては,5ヵ所の最大値をその色紙のデータとしました。※色差計におけるマンセル値への変換は,国際的公式はなく,CR200においては,JIS・Z8721のYxy表色系とマンセル(H・V・C)対応表のデータを解析し結果をL*C*H°に補正を加え求めています。※今回の測定は,白色校正板のみを使用し測定いたしました。測定結果・色紙を集めて同名異色等をある程度分類整理し,それを粒子別に色相・明度・彩度それぞれの最大値と最小値を求め,それの平均値を小数点一桁で四捨五入しデータとしました。※絵具は,製造時期・天然においては,素材等により相当の色差が生じますが,大半の絵具については,重複がある為,平均値的なデータとなっていると思われます。しかし,粒子番号も店に依り実際の粒の大きさには,差も多少ある様で問題も含んで居ります。個々のグラフは,縦軸に明度・彩度,横軸に色相を置き絵具の種類別・粒子別のグラフとしました。東京6社,京都4社の絵具店から協力してもらえる範囲で,それぞれの絵具を集め粒子7番11番白番,朱で総数約二千種の色紙を制作整理しました。整理した結果,今回は,天然岩絵具のグラフ対象は,177色,新岩絵具232色,合成岩絵具66色,準天然絵具19色,朱24色となって居ります。天然岩絵具では,群青11番の平均値は,6 PB4/13,緑青,8G6/7で,グラフにあるその間の色相の点く+〉が,群緑,焼群緑の範囲になります。群青,緑青は,比重が近い為その混色により古来様々な色が作られています。また,辰砂は,3R19になって居ます。辰砂は,厳密な意味では,天然岩絵具でないのかもしれませんが,絵具店等で一応天然と扱われていることもありグラフに入っています。-185-

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