鹿島美術研究 年報第6号
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新岩絵具グラフで,水浅葱は,粒子7番1PB6/7,11番が1PB7/5,白番が1PB8/2となりましたが,水浅葱は,昭和48年日本色研事業朦,色名事典に依ると5.0BG6.5/7で色相的にも別の色相に入る様で新岩絵具の色名体系の独自性が感じられます。また,視覚的印象では,水浅葱7番,11番は,空色・アクア・ブルーシュルに近い感じですか,白番になると藍白・瓶覗・ホライズンブルーに前記色名事典から思われます。それを,水浅葱という同一の色名でくくっている日本画岩絵具のことを考えると,色名とは別の粒子に依る記号的分類である様にも思われます。昭和9年アトリエ社発行のアトリエ美術大講座日本画科第二巻「材料・用具解説」に依ると模造岩絵具として47色ほどの色名が出て居りますが,今回,調査では,232色ほど有り,その色数の増加には,相当なものがあります。合成岩絵具は,絵具店により11番絵具を白番絵具としている所がはっきりして居り,グラフは,入手した絵具の多かった白番で制作しました。色数の割には,従来の日本画岩絵具に比べてP・RP・ Rの色相に色が多く分布しています。準天然岩絵具は,数年前から市販されるようになった絵具ですが,製法等は,合成岩絵具と似た様な製法と思われます。朱は,黒朱・焼朱等も含めグラフにしてあります。色彩計で低彩度・低明度の試料を測定する時,色相については,相当のバラッキが生じて居りますので,その領域の絵具は,赤味の黒,青味の黒等と考える方がよいと思われます。本研究データは,一応パーソナルコンピューターに入力した為,今後の情報も含め後日色名との関係等様々に検索整理しようと考えて居ります。この時点で,思われることは,元来,中国美術の色彩世界としてのモノクロミーの世界から,西洋的色彩世界のポリクロミー的世界に岩絵具全体を見ると変化して来ている様に思われ,ここにも,日本画という領域の変化・多角化を見る様な気がします。また,粒子で一つの色は,10種類位に分類され,それぞれの色を持っている為,ぉよそ4000■5000色位の色・肌を持つ独特の世界が,日本画絵具には,あるという感を強く持ちました。色紙制作については,昭和63年女子美術大学研究生各位に協力をいただきました。187-

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