鹿島美術研究 年報第6号
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く日本における野外彫刻の状態調査〉今回来日された3人の講師による野外彫刻調査は,箱根の彫刻の森美術館の収蔵品を中心に行われた。臨海地区におけるプロンズ彫刻の状態を観察するために,鎌倉の大仏の調も行った。また市街地における彫刻では,上野公園および笠間日動美術館の庭園にあるものについて観察し,0彫刻の森美術館の作品状態彫刻の森美術館の作品調査は,3人の講師全員が参加し,9月14日に行われた。この美術館における作品の手入れとメンテナンスは全体として高いレベルにあり,よく管理されている方であるという印象を与えた。もっとスタッフが多ければよいという意見も出た。立地環境として温泉地に隣接しているので,大気中に高濃度の硫化水素H2Sが出ており,それによる害が多いことを指摘された。ヘンリー・ムーアの作品群に見られた硫化物の黒い斑点発生はその一例である。緑青が硫黄ガスにより不透明黒色に変色している例はヘンリー・ムーアとカール・ミルズの作品に多かったが,ムーアの意図した緑青が失われたことは重大な問題との意見があった。グレコの作品群に見られる変色も同じ原因と推定され,これに関しては更に詳しい調査が必要とされている。彫刻上に白い結晶の発生しているものがあった。Marabelli氏の分析によると,これは硫酸カルシウムであり,中部の鋳造時に用いた芯材の残存物からの再結晶であろうとされている。雨水がブロンズの小さな孔から入り,中のものを溶かしているので,排水をよくする工夫を行うことが大切とのことであった。11: 00■12 : 00 金属彫刻の腐食と変質12 : 00■13: 00休憩13 : 00■14 : 30 青銅器の保存について14 : 30■17: 00 ブロンズ彫刻の調査方法について17: 30■19 : 30 懇親会第3日10 : 00■11: 00 コーティングについて11: 00■12 : 00 ①超音波検査機による調査12 : 00■13 : 00休憩13: 00■14: 00 VTR 14 : 00■15 : 00 ディスカッション②顕微鏡検査に意見を述べてもらった。-213-

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