の両肩,更に左右に配されている,小仏坐像にも烙の表現があり,図像的にもカビシ地方の様式の確立していることを示す。ヨーロッパで所蔵されているカピシ様式の作品の中で最高の例といっても過言ではあるまい。7.もう一つの例は,円じくカビシ地方ショトラク出土の焔屑仏坐像である。Inv.No. MG 23822片岩,Shotorak出土高さ67cm幅49cm(参:MDAFAX p 57 No. 129 pl. x 35) 報告書に既に発表されていたが,殆ど注目されていなかった。顔は破損されているが,円形で無装飾の光背は,カビサ地方では珍しい。更に面白い点は,幅広い肩から焔が燃えあがり,一部は光背から独立して立体的に彫られていることである。他に例を見ない。8.星Inv. No. MG 25541 陶製Shotorak出土(0. 0076mX0.065m) 前述4• eの陶製火焔にやや似ている。三童の醤型で焔を表わしている。中央アジアギメー東洋美術館には,20世紀の初頭,PaulPelliodが天山南路沿いの遺跡,トムシュク,クチャのドルトル・アクール,スバシ等からの出土品が収蔵されているが,焔屑の例は存在しなかった。同じクチャの遺跡キジルには数多くの焔肩佛がみられるのに反して,非常に対称的である。恐らく,仏教の伝播の歴史とも,密接な関係を持っていて,各時代の仏教諸派の性格,即ち小乗(上座部)的,或いは大乗的要素の有無によって変化して行〈ものであろう。烙肩はなくても,焔と関連ある光線・光輝の表現が認められる。9.燃燈仏本生諜Inv. No. E0-01096 Douldur Aque出土木彫(展示場ケースNo.11)燃燈仏の身光背には仏像から発せられた光が直線で表わされている。光輝やく燃燈仏と大唐西域記にも書いてあるが(水谷真成記・巻ニ・三・ニ,p77)。カピシ地方には見られなかった光輝の表現法の成立を意味するもの。図4双神変パイタヴァ出土ギメー東洋美術館蔵-218-
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