鹿島美術研究 年報第6号
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例あった。高さ9.5cm幅7.5cm仏頭の上部は破損されているが,耳から頭光背に続く部分に長方形に近い蓮辮が放射状に,仏頭をとり囲んでいる。更にその外側に光輝が光背の外縁を縁どっている。これは先に30aで紹介した燃燈仏No2468-7018にもやや平たい蓮辮通り,ガンダーラ及びアフガニスタンでは余り例をみない作例である。スワット地方独特の図像であろうか。しかし,この蓮辮を光背にとり入れる傾向は,インドには古くからみられ,サンチー第二塔(宮治昭,インド美術史Fig41. 6)やグプタ朝),マトラーラのジャマルプール出土の仏立像(宮治,インド美術史図12)に示されている。この蓮華文様は,天井にも配されるようになり,アフガニスタンのハイバク仏教寺院のにみられる大蓮華天井(水野清一編,ハイバクとカシュミル・スマスト,京都大学,1962,とが出来たが,スワットの光背にみられた蓮華の用い方も,この点からも興深いものがある。閏璧人蔵及びシカゴ自然歴史博物館蔵の仏教美術烙肩仏・烙のモティーフを求めてヨーロッパの博物館をめぐったが,その他にも貴重な作品が存在することが判明した。ローマ国立東洋美術館にあるフォトコレクションの中から「烙」に関する二点の作品をここに紹介したい。様式の通肩の仏像であるが,立像か坐像であるか,写真からは分からない。ガンダーラ様式の仏像に烙肩を持つ例は,カラチ国立博物館に一例ある他には,非常に珍しい。本例の焔肩の烙は,比較的小型で,先端が全体的に細まり,自然な表現になっている。頭光背はガンダーラに多い無飾のもの。又頭髪もウェーブがやや様式がかってくる中期の特長を示しており,カピシ様式との関連を考慮すると,この烙肩の図像はカピシからガンダーラに伝わったのではないかと考えられよう。この様式がガンダーラで余り発達しなかったことは確かで作品も少ない。頭部冠帯中心脚の仏坐像には,頭光背,身光背の他に,両光背を全体的に包む大光背がみられる36.ブトカラ出土仏頭Inv.N o.BT3522/2288在パキスタン(Photoalbum V 4786) plan 3)にまで発達していった。天山南路のクチャ周辺の好例も今回ベルリンで見るこ37.仏堡ローマIslayde Courby Lyons所蔵(図14)Photo Col.No175ガンダーラ38.菩薩頭部Chicago Natural History Museum No.151813 Photo Col. Gandhara No. 154(図15)-227-

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