鹿島美術研究 年報第6号
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とつと位置づけられている。0スプリングフィールド美術館蔵《ローマのフォーラムのある空想的風景》85X 125.5 cm 現在ではアデレイドの南オーストラリア美術館蔵の作品が真作で,スプリングフィールドのものはコピーだとみなされているが,「真実の書」の最初の作品であるので重視し,撮影,記録した。0フィラデルフィア美術館蔵《田園風景》106.5 X 148.5cm 年記のある作品の中で最古(1629年)の作。〇リチャード・フェイゲン・コレクション〈徒渉場風景》71X 95cm 1630年代前半の作品で,ロッテルダムにほぼ同一の作品がある。所有者フェイゲン氏と意見を交換する機会があった。0バクルー・クイーングベリー公爵コレクション〈パリスの審判》99X 124. 5cm,同《港の風景》99Xl24.5cm共に「1633」の年記がある。0アシュモウリアン美術館蔵《樹木のある風景》38.5X49cm以前は1636年頃の作品と考えられていたが,最近では1630年代前半のものとみなされるようになっている。0ウィーン美術アカデミー蔵《田園風景》30.2X51cm1633年頃の作品。0コペンハーゲン王立美術館蔵《樹木のある風景》65X 94. 5cm 1630年頃の作品。以上,今回の調査で見ることのできた作品中「真実の書」以前のものだけを列挙した。これで,既に調査済みのものをも含め,クロードの初期作品中,公共コレクション所蔵品のすべてと,個人蔵作品の多くを確認することができた。セント・オズワルド卿の〈エジプトヘの逃避》は近年焼失したことが,コレクションを訪ねて判明した。ラトランド公爵からは,残念ながら,調査の許可が得られなかった。次の機会を期したい。しかしながら,それらの個人コレクションにあるクロードの作品には太陽は描かれていないので,クロードの初期作品中,特に太陽が描かれている風景画を徹底的に調べるという,今回の調査の最大の目的は達成されたことになる。クロード絵画の調査と共に実施してきた,クロード以前の画家たちによる太陽の表現の研究も順調に運び,いくつかの新しい知見を得ることができた。しばしば太陽が描かれてきた「キリスト傑刑図」の伝統上の少数の例外を発見できたことも,この調査の成果のひとつである。本調査の最終訪問国,デンマークの王立美術館には,はじめ14世紀末のボローニャ-237-

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