鹿島美術研究 年報第6号
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10.在米日本染織品の表現様式とその絵画的特徴11.文化財の虫害および徽害防除の目的で使用されている薬剤の化学的性質の分析と美術を目的とする。具体的には,各国の技術者との交流を軸に,科学的な情報資料を収集し,実際に処置された作品の観察とその記録を見聞することで後日,体系的な知識・技術としてまとめていきたい。日程:平成元年5月〜6月約1ヶ月研究者:東京国立博物館学芸工芸課染織室員長崎研究目的:アメリカの各美術館には一般に予想されているよりも造かに多くの日本染織品が収蔵されているが,その特徴は,収集に際して作品が当時の日本人的な価値観や美意織に基づいて取捨選択されることなく,広く様々な様式の作品が集められている点である。これは研究上見逃せない点であって,文献や前後の様式展開から当然その様式の存在が予想されながらも国内にその作品が殆ど認められない作品が,アメリカの美術館には現に所蔵されている。小袖や能装束を中心とする近世染織における絵画的表現の展開は,狩野派を中心とする絵画様式を敏感に反映しており,琳派や円山派などの影響を色濃く出した作品も少なくない。またモチーフの取り合わせや構図の特徴,表現の時代性,描写の類似性など絵画との間には多くの相関関係が認められ,染織品の編年に際してもこの点は重要な手掛かりとる。現在,近世染織におけるこうした側面に注目し研究を続けているが,その一環として在米日本染織品の調査は不可欠とも思われるので,ぜひともこれを実行したい。日程:平成元年4月28日〜5月26日ロスアンゼルス材料への影響研究者:東京芸術大学美術学部保存科学専攻博士後期在学杉山真紀子研究目的:デュッセルドルフ,バーゼル,ロンドンニューヨーク,ボストンプロビデンス,シカゴ,巌-241-

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