学Dr.H. S. Chhatpurらの「紙の生物劣化に関する研究」,インド・ナグプール大学2.文化財の生物劣化に関する国際会議の概要Kulpantada Janposriの「紙質美術品のカビ処理一除去と保存」,インド・バローダ大Dr. R. P. Thakreらの「書籍や雑誌の生物劣化」の座長を務めた。Session 2■14では,自然史博物館における生物劣化,壁画のカビ・ムシによる被害,3.講演の概要我が国の文化財保存科学は,昭和8年に古美術保存協議会を組織して研究を開始したのに始まる。我が国では,当初からこの分野に生物学者が参加して研究を推進し,既に56年の研究歴がある。筆者は,この度インドで開催される文化財の生物劣化に関する国際会議が,この課題の会議として事実上世界で第1回目の会議となるので,京国立文化財研究所保存科学部生物研究室は,参加するべきであると考えた。本国際会議は,インド北部ウッタルプラデーシュ州の州都ラクナウのNRLCで,平成元年7月19日から25日まで開催された。会議には,イタリア・イラン・英国・ソ連・タイ・日本・フィリピン・ベトナム・ラオスから20名,インドから約100名が参加した。演題は56提出され,これを14sessionに分けて会議が進められた。筆者は,Session1でNRLC所長Dr.0. P. Agrawalの基調講演「インドにおける文化財の生物劣化に関する研究の概観」,タイ国立博物館保存科学部長Ms.その他紙・木・皮革・石等各種材質の生物被害,空中微生物学,地衣類,昆虫による文化財の被害,各種の加害生物防除薬剤,生物被害の防除方法等多岐にわたる演題について活発な討論が行われた。最終日の総合討論で,インド・ヒンズー大学のProf.B. Raiが,この会議を継続させる必要性を述べ,3年毎に開催することを決議した。そして,会長にDr.0. P. Agrawal (インド),副会長にMs.C. Giacobini(イタリア),Dr.S. Dhawan(インド),新井英夫(日本)を指名して承認させた。次回1992年の開催地を日本とする要望が強かった。筆者は,本会議で「密閉保存による文化財のカビ被害防除法」について講演した。その概要は,次の通りである。筆者ら(新井・見城)は,文化財のカビ被害をカビの生育し難い環境条件に制御し-244
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