IIC副会長,組織委員会委員長)に贈られる旨の発表があり,続いて同氏による記念講3.会議の内容アからの発表論文は28(口頭14,ポスター14)であった。会議資料としてはIIC本部が英文のプレプリント(口頭発表者のみの論文集)を印刷し会期直前に日本に空輸した。日本の組織委員会は口頭およびポスター発表の全論文を含む要旨集(英文,和文)を編集,印刷した。会議は1988年9月19日伺)から23日⑤まで国立京都国際会館において開催された。開会式において本学会の学会賞であるフォーブス賞が山崎一雄(名古屋大学名誉教授,演「正倉院宝物の科学的研究」が行なわれた。正倉院は世界でも稀にみる優れた条件で保存された美術品の宝庫であり,その科学的研究の発表は,特に国外からの参加者に深い感銘を与えた。一般の口頭発表でかなりの部分を占めたのは紙(特に和紙)の保存および紙を利用した絵画屏風,古書籍の修復に関するものであった。紙の発明者奈倫の国からきた中国歴史博物館の周宝中は「中国古代紙の保存」と題して,今世紀になって新彊,甘粛,山西,内蒙古などの中国北西部乾燥地帯から出土した後漢明代の紙の特性について述べ,西晋(A.D. 265■316)以後に行なわれていた紙の保存法について紹介した。京都の国宝修理所で貴重な文化財の修復に従事する宇佐美直八,岡岩太郎の両氏はそれぞれ「日本の屏風の製作と修理」「日本画の裏打ちを剥がす乾式法について」と題し日本の伝統技法に独自の改良を加えた修理法を披露した。現在,西欧の美術館,博物館においては東洋の紙質文化財の保存と修理が大きな問題になってきており,それらの原産国からの報告は特に注目を浴びた。紙にはカビによる着色汚染の問題もあり,米国のスツェパノウスカと東京国立文化財研究所の新井英夫ら,微生物学研究者によるそ原因と除去法の発表があった。紙以外では漆と漆芸品,マレーシアの古代木造船,韓国新安沖難破船,染織品,ガンダーラや中国の彫刻,陶磁器,古代ガラス,青銅器,寺院壁画などについて発表と討議が行なわれた。最近の国際学会は講演数が多いために複数の会場に分れることが多い。しかし,IICは伝統的にこの方式を採用せず,予備審査によって譜演を厳選して数を減らし,1会場方式を貫いている。これによって,誰でもすべての講演を聞くことができるという-271-
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