鹿島美術研究 年報第6号
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6. まとめ文化財の研究に用いられる機器類,伝統的修復材料と用具,文化財保存に関する書籍類などの展示があり,特に外国からの参加者の人気を集めた。出展した業者の話によると,出展依頼を受けた時には「文化財」ということでどれほどの効果があるかと思っていたが,蓋をあけてみると意外なほど多数の客で驚いたということであった。ふだんはひっそりとした京都の表具関係の店は,突如,会議資料にある広告をみて訪れる外国人で溢れ近所の人を驚かせたという。1980年代に入って顕著になった国際化の波は文化財保存の分野にもひしひしと押し寄せてきている。東京国立文化財研究所を例にとると,見学に訪れる外国からの専門家は毎年100名を越している。当研究所の研究員が海外の研究者と共同研究を行なう件数も増加している。このような情勢の中で外国から300名もの専門家を迎えたことの意義は莫大なものである。特に最近まで交流の少なかった中国,韓国,タイ,ビルマ,マレーシア,インドの研究者と親しく交流ができたことは,日本のみならず欧米の研究者にとって得難い体験であったろう。会議終了後日本の組織委員会事務局に届いた多数の感謝状はこのような点を強調している。-273-

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