(2) 第5回研究報告会報告概要2.日本漆工史における「輸出」1.古代エジプトの小美術品武蔵野美術大学講師鈴木まどか古代エジプトの小美術品の大半は,柩,ミイラの包み布,シェブティ,護布などの副葬品として出土したものである。特に第21王朝(前1085■950年)のシェブティは,同王朝の政治的,文化的背景を伝える史料として,また美術面においても極めて重要である。これらのシェブティが,前世紀末に,古都テーベの近くの隠し場から未盗掘で発見され,シェブティを含む当時の副葬品の全貌の把握が可能だからである。しかし,学術的には新王国時代の歴史上有名な王,王妃,第21,第22王朝の神官などの柩,パピュルス文書の解読や分析にのみ集中し,シェブティ,ミイラの包み布などについては詳しく研究されていないのが現状である。第21王朝の小美術品は,史学上の研究が進んでいるため,かなり厳密に年代決定されているので,より小刻みに様式の変化をたどり得る。続く第22王朝から,第3中間期の様式が更に濃厚に現れ,特にデルタ地帯のタニスの王墓出土のシェブティは,この傾向を裏付けている。換言すれば,第21王朝の小美術品は,まさに新王朝時代から第3中間期の様式への転換期を示し,新たな創造を欠いた,単なる新王国時代の継承期という捉え方は一掃されるべきである。この報告では,第21王朝のシェブティの様式を比較検討しながら,更に柩のミイラの包み布など他の小美術品との関連性を追うと同時に全く新しい図像の見地から,シェブティなどの小美術品を考察する。ー長崎・出島を通しての輸出漆器について一京都国立博物館工芸室灰野昭郎我が国の漆工芸品のヨーロッパ向けの輸出は近世初頭,イエズス会の宣教師や東イ-17 -
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